モノ作りとデザインにおけるオープンイノベーションの可能性について考察

物作りにおけるオープンイノベーション

昨年よりモノ作りのオープンプラットフォームwemakeにて、デザイン提案を行ってきました。本業以外でプロダクトデザイン提案活動を開始してから半年が経過し、ここで一旦提案活動の振り返りをしておこうと思います。wemakeは2012年にスタート。当初個人で登録した人のアイデア投稿を各自の得意分野を集めて商品化まで一貫して行うという趣旨のもと始まったオープンプラットフォームでした。ここで、学生時代の作品などを投稿していましたが、実現性やデザイン面で落選。本業では実現できない、でも実現したいと考えるクリエイターが集い、世の中にプロダクトを発信していく仕組みに共感。応援していました。social design newsの以下の記事に興奮したのを今でも覚えています。


2015年に新たにサービス内容が一新され、大手企業との提携によるオープンイノベーションプラットフォームへ進化を遂げていて、wemakeのフットワークの軽さと時代に即したシステムを再構築していく、代表の大川さんと山田さんに敬服するばかりです。提携企業はオリンパス、コクヨ、富士ゼロックスと、大手企業ばかり。一挙にプロジェクトが立ち上がっており、これは自分もうかうかしてられない。なんとしても、この大手企業とwemakeの取り組みに食い込みたい。そんな熱く強い想いを馳せながら、アイデア出しを行い、去年年末から年明けにかけて3つのプロジェクトに参加させて頂きました。

wemakeのプロジェクト型コンペは、他のコンペと違う最大の特徴が2点あります。

1.企業×クリエイター
各企業の担当者から直接提案アイデアに対する意見を頂ける機会があるというのが一点。なかなかコンペ案件で応募した後にヒアリングができる機会など無いので、大手企業も一般ユーザーと共により良い製品を目指し、試行錯誤しているんだなぁと感じました。

2.クリエイター×ユーザー
wemake上に投稿したアイデアは、wemakeに登録している一般ユーザーと共にブラッシュアップをしていける点が2点目です。登録ユーザーは一万人。デザイナーやエンジニア、畑の違う職種の人達がプラットフォームに集まり、モノ作りを楽しみながら、商品化目指してアイデアやデザインに意見を言い合える環境。こんな環境は今まで経験してきたことが無かったので、とても新鮮であり、自分のアイデアにリアクションをしてくれる人達がいることに喜びを感じると共に、アイデアに対する愛着も芽生えてきました。

このようにオープンイノベーションをネット上で推進していく裏側にはwemake代表の山田さんと大川さんの熱い熱い想いがあったのかもしれません。



実際にwemakeを利用した感想を以下列記しておきます。

■特徴

・アイデアを求めている企業とアイデアを提案するクリエイターとのマッチングが図れる。
・アイデアは一度出しても改善を重ねてブラッシュし、再編集することが出来る。
・アイデアに対するイシューを設定し、イシュー掲示板内で、メーカー、wemake運営者、wemake登録ユーザー、投稿者が気兼ねなく課題や問題に対するディスカッションが可能。

■ 改善点

・イシューの投稿が膨れ上がり、論点がズレてくるとその収集に時間が掛かってしまい、アイデアのブラッシュアップに余計に時間が掛かってしまうケースも。ファシリテーター的な役割を担う、チーム性にするなど、問題解決にあたる際にはある程度クローズドな関係が必要かもしれません。
・アイデアに対する実現性については、投稿者やwemake運営者側の配慮によってある程度は想定出来るが、袋小路にハマってしまった場合に専門家などの意見アドバイスを貰える場があると尚良い。
・オープンベースなので、特許や知財などの取得が困難
・受賞後の商品化に向けたwemakeの立ち位置としては各企業にプロジェクトを移行する形だと思いますが、トークルームなどは開かれたままなので、応援して下さったユーザーの方が、その後も参加出来るのかどうか、曖昧な部分もあったかと思います。その都度ケースバイケースで対応していくしかないのかもしれませんが。
・富士ゼロックスさんのコンペでは完全投票制による評価方式でしたが、一般ユーザーと富士ゼロックス社員による投票で、最終受賞作品が決まってしまうというなんともスリリングな評価方式でした。投票の良し悪しについては賛否両論別れるところではありますので割愛しますが、最終評価は富士ゼロックス社員、役員の方々によって決めて頂きたかったというのが本音です。wemakeという新しいプラットフォームで新たな風を吹き込みたいという思想の元であったことは確かだと思いますが、最終的にプロジェクト化を判断する為のディスカッションが果たして最終発表会でどれだけの時間が持てたかというと、疑問が残ることは否めません。その代わり、担当者の方からは責任を持ってなんらかの形で商品化するという宣言を頂いたので少しホッとした次第です。

ざっとこんなところでしょうか。何れにせよ全てが初の試みだと思います。私も毎日刺激を受けながらプロジェクトに参加し、商品化が進みそうなプロジェクトもあり、ワクワクしています。なんとかデザイナーとしての役割を全う出来る場として、自分の力を思う存分発揮出来る場がここにあると感じています。

これからの時代は学歴や職歴に関係なく、素晴らしいアイデアやデザインを持っている人にプロジェクトが集まる。そんな時代になってくれたらと願っています。大手にいようが、中小にいようが、関係ない。業界も関係ない。プロジェクトに人が集まる。そんな時代の幕開けがこれからだと考えたいです。